後立山(長野) 布引山(2683m)、鹿島槍ヶ岳南峰(2889.2m)、鹿島槍ヶ岳北峰(2842m) 2022年7月9日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:35 大谷原−−1:28 西俣出会−−2:58 高千穂平(標識)−−3:56 県境稜線−−4:06 冷池山荘−−4:14 テント場−−4:59 布引山−−5:38 鹿島槍ヶ岳南峰−−6:03 鹿島槍ヶ岳北峰 6:46−−7:23 鹿島槍ヶ岳南峰 8:20−−8:50 布引山−−9:31 テント場−−9:37 冷池山荘−−9:51 赤岩尾根入口−−10:31 高千穂平(標識)−−11:24 西俣出会(水浴び) 11:30−−12:10 大谷原

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2022年7月9日 日帰り
天候晴時々曇
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場大谷原に駐車場あり。今年は橋を渡った対岸の駐車場も利用可能だがそれを知らない登山者が多い
登山道の有無あり
籔の有無藪と言うほどではないが、西俣出合付近では体に触れる草がはみ出した場所あり。登山道の整備は完璧ではない
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント高山植物の開花を期待して今年初の鹿島槍へ。ガレ場トラバースの残雪は先週雪切したとネットで書かれていたが、今週は雪解けが進んで登山道が雪の上端でアイゼン等は不要な状態だった。テント場から先の登山道が稜線東を通る箇所では僅かに残雪上を歩く箇所があるが水平でありアイゼン不要。花はキヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ハクサンイチゲが今がピークで、全体的なピークは来週か再来週になりそう。太平洋側は天気が悪く八ヶ岳、南アルプスは見えなかったが奥日光の山々は見ることができた




左岸側駐車場出発。他に車は1台のみ ゲート
西俣出合の堰堤内トンネルで対岸へ 高千穂平の標識
上部ガレのトラバースは雪渓上端が登山道。もうアイゼン不要 赤岩尾根分岐
午前4時前。東の空が明るくなってきた 冷池山荘。まだ窓の明かりがまぶしい
テント場にはテントが2つだけ 稜線東側には僅かに残雪あり。アイゼン不要
雪切りされた場所もある キヌガサソウ
布引山への登り 4時37分に雲海から日の出
振り返る 立山、剱岳に朝日が当たる
ハクサンイチゲ クロユリ
布引山から見た鹿島槍ヶ岳 ハクサンチドリは布引山で多く見られた
イワオウギ。まだ咲き始め おそらくクモマスミレ
前方に人の姿は無い 奥日光の山々が見えた。デジカメ不調で望遠使えずイマイチの写真
南峰への最後の登り 鹿島槍ヶ岳山頂(南峰)。無人なのは久しぶり
鹿島槍ヶ岳南峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
鹿島槍南峰から見た鹿島槍北峰 葉が細かく切れ込んでいるのでミヤマシオガマ
イワウメ。南峰〜北峰間にたくさん咲いていた 吊尾根鞍部から見た鹿島槍北峰
鞍部付近にチングルマが咲いていた 北峰分岐
コケモモにそっくりだが花の先端が閉じているのでコメバツガザクラ 鹿島槍ヶ岳北峰山頂
鹿島槍ヶ岳北峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳北峰から見た鹿島槍ヶ岳南峰 鹿島槍ヶ岳北峰から見た五竜岳方面
鹿島槍ヶ岳北峰から見た奥日光 鹿島槍ヶ岳北峰から見たカクネ里雪渓(氷河)
鹿島槍ヶ岳北峰のコイワカガミ 鹿島槍ヶ岳北峰のミツバオウレン
北峰を後にして南峰に戻る。写真の人物はキレット方面へ縦走 イワベンケイ
キバナシャクナゲ チシマアマナ。先週の針ノ木岳より少ない
鞍部から南峰まで標高差約100m ミヤマキンバイ。今回は各所で多数みられた
タカネヤハズハハコ ツガザクラ
ミヤマダイコンソウ。今がピーク 花弁が少ないがおそらくハクサンチドリ
ミヤマクワガタ ミヤマオダマキ
岩場の登り返し。雪や凍結で厄介な場所 先週も見たが未だ種類特定できず
葉の形状からシコタンハコベらしい 鹿島槍南峰再び
鹿島槍南峰から見た南の稜線 イワツメクサ
クモマスミレ トレランの男性。赤岩尾根分岐手前で追い越された
イワツメクサの群落 ミヤマクワガタ
タカネツメクサ ハクサンチドリ
アオノツガザクラ。数は少ない おそらくテガタチドリ。ハクサンチドリより花弁が丸っこい
カラマツソウっぽい
シコタンソウ。小さく目立たないがたくさん咲いていた イワギキョウの蕾かな
布引山 今シーズン初のハクサンフウロ。布引山にて
ハクサンボウフウかシラネニンジン系の花 葉の形状からハクサンボウフウらしい
がっしりした感じなのでたぶんミヤマトウキ。セリ科は判別が難しい 左写真の葉っぱ
ミヤマダイコンソウの群落 この水平区間を通過すると一度森林限界を割る
コケモモ。ハイマツの根元にたくさん咲いていた ミツバオウレンに似ているがバイカオウレン
緑色の花のゴゼンタチバナ 白い花の「正統派」ゴゼンタチバナ
ツマトリソウ マイヅルソウ
サンカヨウ ショウジョウバカマ
ミヤマキンポウゲ。まだ咲く始め シナノキンバイ。盛りはこれから
ミヤマキンポウゲの群落 ミヤマキンバイ
ベニバナイチゴ コバイケイソウ
この中にシラネアオイが咲いていた。デジカメが正常なら・・・・ ヒメイチゲ
下山時のテント場
テント場付近から見た爺ヶ岳 ミツバオウレン。木陰に咲いている
冷池山荘 アカモノ。赤岩尾根でも多数見られた
赤岩尾根分岐への登り返し。風が吹き抜けて気持ちいい! 鹿島槍を振り返る。徐々にガスり始めた
下山時にすれ違ったトレランナーに追い越された タカネバラ
赤岩尾根分岐。私以外は全て柏原新道方面へ 赤岩尾根上部のチングルマ
デポしたストックと軽アイゼンを回収 ナナカマドの花
上部のガレ。来週には完全に雪は消えるだろう 下部のガレ。雪は無い
ユキノシタ科はセリ科同様に判別困難 ミヤマダイモンジソウ
ウラジオヨウラクっぽい。草ではなく木 赤岩尾根を見下ろす
アズマシャクナゲ 赤岩尾根にもミヤマダイコンソウあり
ニガナ ミヤマママコナは赤岩尾根でしか見なかった
ヨツバシオガマは赤岩尾根でしか見なかった シロバナニガナ
ユキノシタ科 白樺平
ヤマハハコ ハクサンオミナエシの蕾
ニガイチゴ
山頂に雲がかかる ウサギギク。一輪だけ咲いていた
オオバギボウシの蕾 シモツケソウの蕾だと思う
高千穂平(標識) オオカメノキ。もう最後かな
タニウツギ。たくさん咲いていた
遭難慰霊レリーフ
補修された階段。ちゃんと整備されているようだ ユキノシタ科
アジサイ おそらくオニシモツケの蕾
ズダヤクシュ オトギリソウ
トンネルのある堰堤。木が邪魔で良く見えない
トンネル東側が草が延びて藪っぽい 大冷沢へ水浴びに
大冷沢。水量は多め。水は冷たい 残りは長い林道歩き
林道分岐点。ここから廃林道色が濃くなる 背が高い(30cmくらい)ウツボグサ。こんなのは初めて
ゲート(西側から見ている) 冷池山荘の小屋泊まり&幕営者への注意喚起(お願い)
ゲート(東側から見ている) 左岸側駐車場到着


 今週末は大気の状態が不安定ながら基本は晴れ予報で、風も弱そうで稜線歩きが長い山でも大丈夫そう。ただし雷雨が予想されるお昼頃には下山したいところ。そろそろ高山植物の開花がピークを迎える時期であり、悩んだ末に鹿島槍を選択。おそらく来週かその次の週辺りが花のピークになりそうなので、そこで白馬岳にすることに。白馬は花の数も種類も圧倒的なので本当の開花のピークで登りたいが、鹿島槍ならその手前の時期でもいいだろう。それでも常念岳や爺ヶ岳よりも十分に花を楽しめる。

 私の場合は鹿島槍に登る場合は赤岩尾根一択。一般的には柏原新道から往復する人がほとんどだが、赤岩尾根の方が距離が短いし帰りの登り返しが少なくて済む。疲れた足で爺ヶ岳中峰直下まで登り返すのは精神的にきつい。また、登山者数が少ないので駐車場事情もかなりいい。柏原新道は好天の週末には夜中に到着しないと駐車場確保は難しいが、赤岩尾根登山口の大谷原はそのような混雑は考えられない。

ただし赤岩尾根はかなりの傾斜で、北アの三大急登には入っていないが体感的には合戦尾根や早月尾根より急である。よって下りでは膝を支える筋力がかなり消耗し、足が強くないと登りより下りがきついのであった。また、尾根最上部のガレのトラバースは遅くまで雪が残り、残雪状態によってはアイゼン、ピッケル必須となることがある。幸いにして先週に冷池山荘が営業開始し、残雪の雪切をしてアイゼン不要で通過可能との情報がネットで上がっていたが、私がそこを通過する時間は夜明け前の気温が下がった時間帯であり、雪が固く締まってノーアイゼンでは危険かもしれない。よって6本爪の軽アイゼンとピッケル代わりのストックを持つことにした。通過後はこれらの出番はもう無いのでデポしよう。

 大谷原の駐車場は2箇所あり、登山口に近いのは橋を渡った先にある左岸側の駐車場。と言っても手前の右岸側の駐車場との距離は100mもないくらいしか差はない。当然のように午後8時には車は皆無。山頂で日の出を迎えるためには前日出発が必要であるが、睡眠時間が短すぎるので日の出から1時間後くらいに山頂到着になるように0時半くらいに出発できるよう午前0時に目覚ましをセット。酒を飲んで眠りに付く頃に1台の車がやってきて隣に駐車。すぐに仮眠に入ったようで車の中は真っ暗になった。

 目覚ましのアラームで起床。タイミングが良かったようで4時間睡眠でもすっきりと起床し、早すぎる朝飯を食べて出発。今週も暑いが先週よりはマシで、扇で扇ぎながら林道歩き。頭上は満天の星空で予報よりも天気はいいようだ。ただし気温が上昇する日中は大気の状態が不安定になる予報であり、お昼前には下山できるよう山頂の出発時刻に注意だ。

 西俣出合で堰堤内トンネルで対岸へ。この堰堤周辺が毎度草がはみ出しているが今回も同様。草にダニが付いていないか心配だったが、下山後にチェックしたがダニはいなかった。ちなみに先週の針ノ木岳では駐車場に戻って着替える際のチェックでダニが一匹、足に食い付きかけていた。晩春から夏場にかけては体に触れる草や笹がある場合はダニに要注意だ。

 赤岩尾根に取り付いて少し高度が上がると体に触れる草は無くなる。そこからは一気の登りが始まり、気温が低い夜中に登るメリットが大きい。幸いにして今回は登りでもほとんど汗をかかずに済んだが、これが日中なら大汗をかかされただろう。下山時はお昼近い時間帯だったが大汗をかいたが、こんな状態で登りたくはない。

 樹林帯でも多少は花を見ることができるが、真っ暗闇の中でフラッシュ撮影すると白飛びして花の色が分からくなってしまうため、撮影は下山時に後回し。赤岩尾根ではニガナやアカモノ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウが多く見られた。イワカガミはほとんど終わってしまって日陰になる北斜面にのみ咲き残っていた。ミツバオウレンも主に北斜面に咲いている。そもそもミツバオウレンは木陰に咲いている花なので直射日光が当たる場所では見られない。

 高千穂平の標識が立つ2045m肩に達するとようやく傾斜が緩まる。この先は樹林が開けて稜線の様子が見えるようになるが、山頂で日の出を迎えようとする登山者は皆無のようで稜線に光は見えず真っ暗だった。ダケカンバが混じるようになると森林限界は間近。ただし赤岩尾根の森林限界は不明瞭で、岩っぽい痩せた尾根を登っているといつのまにか森林限界を越えている。

 残雪が心配だったガレのトラバースだが、下部のガレには残雪は皆無で上部のガレには残雪はあったが登山道が残雪の上端であり、雪の縁を歩けばいいのでアイゼンは不要だった。冷池山荘スタッフが雪切した一週間前の写真と比較して劇的に雪が減っており、来週には完全に消えてしまいそうだ。

 この先はアイゼンもストックも出番は無いので、ガレを通過した先でデポすることに。いつもなら帰りに発見できないリスクを考えて目立つ場所に置くのだが、今年の大型連休中にデポしたワカンを盗まれる事件を経験しており、見えない場所に隠しておくことに。と言っても何の特徴も無い場所では探すのに苦労するので、周囲より微妙に藪の薄い場所からハイマツ藪の中にデポ。登山道から見上げても全く分からないので盗まれる可能性はゼロであるが、下山時に自分で見つけられない可能性が。結果的には簡単に見つけることができた。

 県境稜線に乗る頃には周囲は僅かに明るくなってきたが、まだライトの光が必要。赤みを差した東の空は背の高い雲海で、およそ標高2000m以上の山だけが雲海から頭を出していた。快晴ではなく頭上は薄曇りだが、多少雲があって直射日光を遮ってくれた方が日が高くなってからは暑さをしのげる。ここまで達しても稜線には登山者の光は皆無で、種池山荘方面にも光は無かった。

 鞍部に下って登り返して冷池山荘に到着。通常の夏山シーズンの土曜朝は少なからず小屋前に登山者がいるのだが今回は皆無。金曜日に登った人は少ないようだ。テント場に到着すると2張のみでこれまた少な目。この頃にはギリギリでライト不要で歩ける明るさになっていた。

 ここからしばらくは登山道は稜線直上ではなく東直下を巻いて斜面はお花畑になる箇所であるが、今年は僅かながらまだ雪が残っていてお花畑の開花は進んでいなかった。それでも少し離れた斜面にコバイケイソウ、シラネアオイが咲いていた。いつもならデジカメのズームで撮影するのだが、先週からレンズ駆動系が不調でズームができず、ワイド端で撮影したがシラネアオイの存在は写真では判別できなかった。道端には地面を這うように背丈が極端に低いミヤマキンバイが咲いていた。このコースではミヤマキンバイは広範囲で咲いていて、今回見た花では最も多かったと思うし、今が花のピークのように見えた。

 残雪の上に真新しい足跡があったが前方に3人組を発見。本日初の登山者の姿だ。当然ながら冷池山荘宿泊者のはずで、まだ出発直後で私より元気なはずだが思ったよりも足が遅く、残雪の上で私が追い越して先行することになった。このパーティーは私が鹿島槍北峰で休憩中に追いつき、キレット方面に縦走していった。背負っていたザックは幕営装備ほど大きくはなかったので、小屋泊まりの可能性が高そうだ。

 登山道が東斜面から西斜面へと移り変わる区間はミヤマキンポウゲとシナノキンバイのお花畑だが、まだピークではないがだいぶ咲いていた。サンカヨウ、キヌガサソウも。サンカヨウの花は夜露に濡れて半透明だった。

 この先は再び森林限界を抜けてハイマツ帯に入るとコケモモが多数咲いていた。西寄りの風がやや強く寒さを感じたので手袋、毛糸の帽子、薄手のウィンドブレーカの防寒装備を追加。湿った南風かと予想していたが北西の風でちょっと意外だった。

 水平区間が終わって傾斜が出てくるといよいよ花が増えてくる。ミヤマキンバイの他にハクサンイチゲが多く見られまさに今がピーク。見頃は来週くらいまでだろう。ミヤマダイコンソウも今がピーク。今年は花の開花が早いようだ。昨年は気付かなかったクロユリは一部のエリアにまとまって咲いていた。黄色いスミレはクモマスミレかキバナノコマノツメのどちらかは判別が難しいが、岩っぽいところに咲いていればクモマスミレの可能性が高いだろう。

 傾斜が緩むと布引山山頂。昨年は立っていた山頂標識は今年は地面に倒れていた。長年風雪に耐えた古い標識なので仕方ないだろう。布引山山頂はハクサンチドリが目立ち、今回のコースの中でもハクサンチドリが最も多い場所だった。そして数は少ないが今年初のハクサンフウロも。この他にセリ科の花が2種類見られたが、一方はがっしりした印象なのでミヤマトウキの可能性が高いが、もう一方はハクサンボウフウかシラネニンジン辺りと思われるが、私の知識では判別はできない。

 布引山から鹿島槍ヶ岳南峰までの間は、西斜面は強風で背の低い花が中心で、遅くまで雪が残る東斜面は風当たりが弱く背の高い草花が多く、生えている植物は対照的である。帰りに気付いたが西斜面側にはシコタンソウがたくさん咲いていたが、背丈が極端に低いし花が小さいので歩きながらではその存在に気付かないほどだった。

 稜線を振り返ると追い越した3人パーティーが数100mの差で登っていて、その後さらに数100mにソロの登山者の姿があったが、それ以外に視界に人の姿は無かった。夏山シーズンの週末にしてはやっぱり人はかなり少ない。

 登り切れば鹿島槍南峰(鹿島槍山頂)に到着。久々に無人の山頂で独り占め、とは言っても展望写真撮影だけして北峰を目指すのだが。ラジオを聞きながら歩いてきたが静岡県には大雨警報が出ているとのことで富士山、南アルプスは雲に覆われて全く見えなかった。八ヶ岳でさえ北端の蓼科山のすそ野が僅かに見える程度。しかし東に目を向けると雲海に突き出した志賀高原の横手山〜裏岩菅山間に奥日光の日光白根、錫ヶ岳、男体山が見えていた。残念ながらデジカメが不調でズームが使えなかったのでろくな写真にならなかったが、肉眼ではこれよりもっとはっきりと見えた。そして岩菅山の左には尾瀬の燧ヶ岳、至仏山も姿を見せていた。これだけ見えれば満足だ。

 山頂直下では冷たい北西の風が山でブロックされて快適だったが、山頂に出ると再び風が強まって寒くなる。日が高くなれば気温が上がって暑いくらいになると思うが、しばらくは寒さに我慢だ。風を通す軍手では役者不足。

 風に吹かれながら鹿島槍北峰を目指す。正確には山頂が目的と言うよりも北峰までの間に見られる高山植物が目的だ。鹿島槍の場合、南峰から南側の県境稜線と南峰〜北峰間では花の種類が大きく異なるので、花好きなら北峰まで足を延ばすべきである。下り始めてすぐにそれまで全く見られなかったイワウメが登場。同じくこれまで全く姿が無かったミヤマシオガマもあちこちで花を咲かせている。ツガザクラも多い。これまで見かけたミヤマダイコンソウやミヤマキンバイは当然のように咲いていた。数は少ないがミヤマクワガタ、ミヤマオダマキも。最低鞍部付近ではチングルマ、シナノキンバイの群落あり。鞍部の南側には大きな雪渓がまだ残っていた。

 キレット方面への縦走路を離れて北峰山頂へ。ここも花が多く楽しめる。イワウメに混じってコケモモのような白い小さな花はコメバツガザクラ。ぱっと見ではコケモモと葉っぱ同じで花のサイズと色も同じに見えるが、花の形が微妙に異なる。コケモモは花の先端が釣鐘状に開いているが、コメバツガザクラは壺の口のように狭まっているのが特徴である。そしてコケモモはハイマツの影など直射日光が当たらない場所に生えるが、コメバツガザクラは開けた場所に生えているのも違いである。

 花を愛でながら登ると無人の鹿島槍ヶ岳北峰に到着。北側の眼下にはキレット小屋、東側にはまだ残雪が多いカクネ里雪渓。ここは国内で数少ない氷河の一つである。ここから見ると穏やかな雪渓で簡単にアプローチできそうに見えるが、沢を遡上しようとすると険しくて簡単にはできないため、長年調査ができていなかったそうだ。氷の厚さは30mもあるとのこと。その東の空にはまだ奥日光の山々が見えていた。もっと手近なところでは頚城山塊、黒姫山、高妻山、そして辛うじて飯縄山の山頂部が雲海から突き出していた。大きな南峰を見ると3人組と単独行者がこちらへと下っている最中。単独者の方が先行していた。私のように北峰をピストンなのか、それともキレット方面へ縦走だろうか。

 ここでも北西の冷たい風が強く、東尾根を僅かに下ったハイマツの影で風を避けて休憩。足元にはコイワカガミとミツバオウレン。パンを齧って腹を満たすと軽装の単独男性が上がってきた。北峰ピストンかと思ったら縦走路分岐にザックをデポしての北峰往復で、これからキレット方面へ縦走して今日は五龍山荘までとのこと。3人組も遅れて上がってきて写真撮影して短時間で下っていった。彼らもキレット方面へと縦走していった。

 私は彼らとは逆に南峰へ戻りながら花の写真撮影。デジカメが不調で何度も電源ON/OFFを繰り返しながらであるが、完全に撮影不能になることはなかった。このデジカメより新しいが故障していたデジカメを修理に出したので、来週にはそちらにバトンタッチできそう。修理依頼のついでにネットで調べたら、時代の流れでスマホに押されて価格の安いコンパクトデジカメは以前と比較して機種が極端に減っていて、殆どが大形センサーを使用したものやミラーレスなどの高級機種へと移行していた。修理したデジカメが次に壊れたら、私もスマホか高価格帯のデジカメに移行せざるを得ない。それまで何年持ってくれるか。

 南峰に戻ると2人が休憩中。やはり今週はまだ人は少ない。南峰で休憩中にやってきた登山者はこの他に北峰を往復した2人組とトレランナー、それにキレット方面から縦走してきた2人だけであった。学校が夏休みに入って以降が賑わう時期かもしれない。休憩している間に徐々に風が弱まり気温も上昇して寒さは感じなくなったが上空には薄雲が広がる。これから下山すると高度を下げるに従って気温が上がっていくので、日差しが無い方が助かる。

 休憩を終えて下山開始。南に延びる縦走路には人の姿は無し。帰りは花の撮影をしながらなので時間はかかるが、夏場に頻繁に登っている常念岳や爺ヶ岳では見られない花がたくさんあるので足が止まるのも仕方ない。今回は雷鳥差探しはせずに花探しだった。

 傾斜が緩む頃にトレランナーとすれ違った。ぱっと見では全く荷物を背負わない空身に見えたが、背中をよく見ると背中にピタッと張り付くような厚さがごく薄いザックとは呼べないようなザックを担いでいた。中に何が入っているのか分からないが、少なくとも防寒装備は入っていないだろうし雨具でさえも怪しい。トレランでは装備を軽量化してスピードアップを図ることでリスクを軽減している面もあるが、あまりに装備を削り過ぎるのはリスクが高い。アルプス級の山では最低限、雨具とある程度の防寒装備は必要だと個人的には思う。

 一時的に森林限界を割って樹林帯に入るとミツバオウレンに混じってバイカオウレンが見られた。花の形状はよく似ているがミツバオウレンより花弁が太く、葉っぱが明瞭な三つ葉ではなく四つ葉や五つ葉に見えるので判別可能。ミツバオウレン同様に直射日光が差さない場所に生えている。日陰に咲く花にはゴゼンタチバナがありここでも多く見られたが、通常の白い花の他に緑色の花もあった。

 テント場に近付くと登りの数人とすれ違う。おそらく柏原新道から上がってきた日帰りの人だろう。往路で見かけた2つのテントは撤収済みで今はテントは皆無。でも週末なのでこれから賑わうだろう。冷池山荘では縦走するらしい大ザックの男性の姿あり。

 最低鞍部から赤岩尾根分への登り返しで、南峰からの下りですれ違った軽装のトレランナーに追い越される。彼は爺ヶ岳方面へとさらに上がっていったがこちらは赤岩尾根へ。この時間帯は爺ヶ岳方面からやってくる登山者の姿が目立つようになった。この時間帯だと鹿島槍日帰り組が大半かな。

 赤岩尾根は相変わらず人気(ひとけ)がなく、上がってくる登山者は小屋関係者らしい背負子に段ボールを括り付けた男性のみだった。真夏のシーズンになればもう少し増えるだろうが大賑わいになることはないだろう。逆に柏原新道は今日も大賑わいだろう。

 赤岩尾根では往路では気付かなかった花あり。ガレのすぐ下のミヤマダイモンジソウにさらに下ってミヤマママコナ、ヤマハハコ。オオバギボウシはまだ蕾だったが昨年は気付かなかった。おそらく登った時期は花が終わってからだったのだろう。鹿島槍はそれほど頻繁に登っていないからなぁ。

 背負子の男性とすれ違って高千穂平の標識を通過して急激な下り。一時的に雲に入って天然ミストで涼しくなるが短時間で抜けてしまい再び暑さが。下りでは赤岩尾根に入ってから首に濡れタオルを巻いて頸動脈の血管を冷やして少しでも体温を下げるように工夫しているが、気温そのものが高いと暑さはいかんともし難い。濡れタオルで頻繁に汗を拭いながら下っていく。下りでコケるとまた膝を痛めて日常生活に支障が出かねないので、速度を落として慎重に歩いた。

 西俣出合で堰堤を潜って対岸に出て林道終点から草藪を分けて北股本谷に下って水浴び。雪解けの影響か水量は多めで水は冷たく気持ちいい! 残りは長い林道歩きで、できるだけ木陰を拾いながらのんびりと緩やかに下っていく。すれ違う人も工事車両も無く静かで、沢の流れる音(堰堤を落ちる滝の音)や風で木の葉がざわめく音、小鳥の声など自然の音だけ。人工的な音は私が鳴らす熊避け鈴のみ。そういえば今年はまだ熊の姿を見ていないなぁ。残雪期に見た熊の足跡も少なかった。

 誰ともすれ違うことなく大谷原の駐車場に到着。いい場所に駐車したので車は木陰に入っていて車内は温室になっていなかった。着替えていると虻が刺したのか足に鋭い痛みが! 夏らしい光景である。

 軽く飯を食っているとトレラン姿の男性がやってきて、赤岩尾根上部の残雪状況を尋ねてきた。なんでも2週間前にここを上がったらヤバい残雪で撤退したとのこと。2週間前だとマジなアイゼンとピッケルが無いと突破不可能な状況だっただろう。今はもう雪装備は無しで問題なく、柏原新道経由でトレランナーが何人も上がっていたので、柏原新道も残雪の影響は無いと回答した。しかしこの暑いさなかに上がるとは恐れ入った。でも大気の状態が不安定で森林限界で雷雨に遭う可能性が。

 車の温度計によると大谷原の気温は+22℃で日影は涼しかったが、大町方面へ下っていくとじりじりと上昇し、旧美麻から小川村に入る頃には+30℃を越えて、長野市街では道路脇の温度計は+35℃を示していた。

 

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